今でも思い出したくない、ある面接の話2
前回から引き続きの、ある企業の面接の話です。嫌な記憶として非常に印象に残ったことを書いていこうと思います。
とりあえず1次面接は合格しました。当時の僕はまだ納得できる内定はなく、ストック(選考途中の企業)の状況も芳しくなく9月を目前にしていたため、内心焦りを隠せませんでした。
そんななかで、この製本会社はまぁ悪くなさそうな企業でしたので、あまり考えず選考を進めました。
しかし1次面接でアレだけのことをされた企業です。注意深く対策をして面接に望みました。会社の事業や、自己分析を練り直し、もちろん自己PRを10個くらい考えてきました。
この面接の内容ははっきりと覚えていません。
それは、ある質問のインパクトが大きすぎて、それしか記憶に残ってないためです。
前回と同じ女性(中小なので最終までは彼女が務めるらしい)で内心「うわぁ・・・」としたものの、連戦をくぐり抜けてきた自分の舌とにこやかに作った顔で、問題なく進んでいきました。
1次面接よりかは普通かな、と思った矢先、あることを聞かれました。
「きみを雇うことで弊社にどんなメリットがあるか、具体的に教えて。」
これは面接やESの本とかでよく見かける一文です。ですから「聞いたことがある質問だな」と思いました。なので、回答しようと内容を考えました。
ですが、内容が全く浮かんでこない。僕はこのことについて何も考えていなかったし、答えを見つけることが出来ませんでした。
自分を雇うことでこんなメリットがある。これは採用活動における基本的なことです。ボランティアじゃないので、役に立たない人は雇う必要はない。ごくごくふつうの事です。
じゃあ新卒を採用する意味はなんなのか。僕はそれが分からず、面接官の前で固まってしまいました。
いつもはどんな難しい質問が来ても、舌が上手く動いてくれました。しかし今回ばかりは全く思いつかない。僕は、どんなメリットを有した人物なのか。
会社にとって即戦力となる人物が欲しかったら、中途採用が適しています。すでに職業について経験を持ち、場所を変えても仕事が始められるなら、それは会社にとってメリットです。
じゃあ新卒はどうか。たとえば法学に詳しい人物なら経営法やらの知識をアピールでき、メリットになると言える。特別な能力や資格を持っているなら、それでメリットになることが出来る。英語の資格があるなら国際化の手助けになるといえる。
では特に資格を有しない、平凡な学生である自分がもつメリットはなにか。「会社に新しい風を吹き込む」なんて就活マニュアルにあるような非現実発言なんて出来ません。そもそも新しい風を吹き込むなら、別に中途でもできる事です。
僕は答えられませんでした。この会社に入り、どのような仕事をするかイメージできなかった。だからこの質問に答えられなかったんだと思います。
そうなると、なぜ新卒はメリットも少ないのに採用されるのか、そこから分からなくなっていきました。まるで哲学です。能力のない人間は淘汰されるのですから、メリットがない人間はいらない。そんなにメリットを望むなら新卒採用なんかせず中途採用だけしてればいいじゃないか!
とまぁこんな感じに思考が巡り、あとの面接についてはよく覚えていません。結局この企業は、面接結果が出る前に辞退しました。
僕が新卒採用制度を批判できない理由はここにあります。確かに新卒採用制度のおかげで126社も落ちるような目に合わなきゃいけなかったのは事実です。しかし、この制度がなければ自分みたいな資格も持ってない「メリットがない新卒」を企業が採用する必要がなくなってしまう。ある意味でこの制度に助けられたとも思うわけです。
当時はこの質問について思い悩み、答えを考えようとしている中で大学から内定を頂き就活は終わりました。
今でも、「資格も能力もない若造を採用する、具体的なメリット」が理解できないままです。そしてこの質問をした企業が、新卒採用で僕みたいな人間を選考に進ませた意味も未だに分かりません。社会人となり働き続ければ、わかるかもしれませんが。